似て非なる?パスサッカー FC東京vs広島 7月25日(土)
事前に面白いサッカー決定戦などと喧伝されたこともあってか、結構な客の入りだった。 そして、双方堅い戦いを選択したように見えた。 広島は守備を厚くし、リアクションを主体とした。 対する東京は連勝中の戦いを継続し、交代カードも新しいものは切らなかった。
確かに広島は守備的だった。 守りに人を厚く配し、能動的に試合をコントロールするよりも、リアクション→カウンターに徹していたように見えた。 時計が進むに従い、その傾向はどんどん強くなった。
ただ、確かにカウンター中心ではあったけど、それでも、広島は自分達の形を作っていたと思う。 いや、カウンターだからこそ、広島らしさが随所にみられた。 (チームの攻撃の形はカウンターに最も現れるというのが私の持論だが、それについてはこちらを。)
一番の広島らしさは斜めパスの活用して裏に抜ける動きだろう。
縦パスの場合、FWが手前で受けると、そこから前を向くのは難しく、もう一度展開しなければならない。 裏に抜けて受けようとしても、後ろからDFを追い越さなければならない。 早く飛び出しすぎるとオフサイドになる。 パスがちょっとでも強いと、裏のスペースを通り抜け、GKにセーブされてしまう。 横パスでは、そもそも相手の裏を突けない。
そんな問題を一気に解決するのが斜めパス。
例えば、右後方から左前方への斜めパスには、受け手のFWがオフサイドラインの手前にいても、DFよりもファーサイド(左側)にいれば、先にボールに追いつける可能性がある。 GKの飛び出せない広大な両サイドの裏のスペースを活用することができる。 FWの走る方向に向けて速い斜めパスを出せば、FWと併走するCBは手前でパスカットしようにも、失敗すると一気に裏をとられるから怖くてパスコースに飛び込めない。 FWは自分が走る方向にパスが来るので、多少パスの精度が低くてもボールを受けることができるし、しかもオフサイドライン手前からDFを追い越して縦のスルーパスに追いつくのよりもずっと簡単。 走りながらボールを受けるから、そこから次の展開にスムーズに移行できるし、前線で身体を張ってボールを収めてからよりもずっと簡単。
そういう斜めパスを一番利用しているのが広島で、そういう斜めパスを呼び込む動きが実に上手いのが寿人だと思う。 オフサイドラインを掻い潜り、相手DFとの間合い・スペースを絶妙に維持しながら斜めにゾーンを切り裂き、パスを呼び込み、起点となる。
そこに両シャードーの柏木、高柳→高萩も絡み、オートマティズム溢れる動きで相手を揺さぶり、ギャップを生む。 ハム太やハンジェがサイドに張り、徳永や長友に内に絞らせない。 それでも内に引き寄せられると、すかさずサイドにボールが出る。 (アウェイ広島戦でドフリーのミキッチに出たのはまさにそんなボールで、そこから高萩に決められてしまった。) あるいは一方のサイドに引き寄せておいて、一気に逆サイドに展開する。 ディフェンスは的を絞れず、後手を踏むことを余儀なくされる。
中でも一番の真骨頂は連続の斜めパスだろう。 ゴール裏から見ると、横にジグザグにパスが通っているように見える。 DFはプレスもかからず、オフサイドも取れず、ズルズル下がり、一気にゴール前にまで持っていかれる。
このあたりの動きは、ワントップかツートップかの違いこそあれ、後半だけで5点取られて沈没した2006年のアウェイ広島戦の頃から大きく変わっていない。 成熟のなせる技である。
斜めの揺さぶりからマークのギャップやサイドでの数的優位を生み、そこを突く。 守備重視とはいえ、土曜の広島は、それなりに広島らしさを存分に発揮していたと思う。
(ちなみに、2006年のアウェイ広島戦は、個人的に自分が観た中で、J1に上がってから一番コテンパンにやられた試合という印象がある。 0-7のクラシコや去年清水に1-5でやられた試合は、アンラッキーな面もあったし、もう少しやりようがあった気がするけど、2006年のアウェイ広島戦の後半は、文字通りなす術なくやられた印象がある。 だから2007年の降格は今でも不思議なのだが。 ディフェンスの崩壊だけが原因?)
それに対し、東京のディフェンスもよく頑張っていた。 特にブルーノは確実にボールを跳ね返すだけでなく、前にピンチを摘みにいき、さらには寿人を弄ぶような足技まで見せ、とても良かった。
他方、東京の攻撃。 パスサッカーとは言え、広島はだいぶ違う。 斜めパスや、ワントップ・ツーシャドーというような定まった形より、即興性や、その場の判断が鍵を握るサッカー。 中での一瞬のギャップを突くこともあれば、サイドの裏を突くこともある。 より融通無碍ではあるものの、運動量が減ったり、嗅覚が鈍ると劣化しやすい。
特に後半はそれが出たと思う。 最終ラインでのボール回しからスイッチを入れようにも、中盤、特に羽生が動けない(疲れ?カウンターへの警戒?)。 平山に当てようにもすぐ相手に囲まれる。 石川や梶山が駆け上がって裏を狙おうにも、スペースが足りない。 サイドに張りっぱなしのハム太やハンジェを警戒し、両サイドも上がれない。 中央の狭いスペースでのパス交換から相手を押し込むことはあったけど、決定機はなかなか生まれなかった。
また、ベストメンバーとそれ以外との差が、誰が出ても概ね定まった型の中で戦う広島よりも大きいかもしれない。 リードして試合を進めたここ数試合と異なり、同点だったにもかかわらず、交代選手がいつもと同じだったのは、そのあたりの影響も大きいと思う。 城福監督だって、サテライトや練習試合の様子は見ているだろうし。
結局、広島ディフェンスを、いや、より一般的な意味で、引いた相手を打ち破れないまま、0-0で終了。 それでも、前半、攻撃の端緒を掴もうとする両チームの動きは質がとても高く、観ていてとても面白かった。 0-0は残念だけど、理詰めのサッカーをする相手を堂々押し込めたことは良かった。
こういう展開では、もっと早いタイミングでのミドルを観たかった。 シュートはたくさん打っていたけど、相手DFに当たるシーンが多かった。 梶山は、あれだけ意外性のあるパスを出せるのだから、シュートももっと相手が反応しにくいタイミングで打てるのではないかと思うのだが。
課題は攻撃のスピードアップのタイミング、セットプレーに加え、運動量を上げられない状況でリスクを背負ってでもSBやCBがいかに攻撃に絡むのか、の整理だろう。
さて、ここまで固定メンバーで連勝→無敗と来たが、そろそろ次のステップに動く時だろう。 4点のアドバンテージがある水曜のナビスコ杯名古屋戦は動きやすい試合。 ただ、相手は固め取りも可能であり、さらにリベンジにも燃えていることだろう。 新たなチャレンジにどう立ち向かうか。
名古屋には行けないけど、明日はJヴィレッジに行ってきます!
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コメント
まずはおめでとうございます
って、知らない人にはわからないだろうけれど(笑)
さて、試合の雑感
喧伝された「どちらが楽しいか」対決としては非常につまらなかったです
ただ、試合内容はご指摘の通り、非常に高度なものがあったと思われました
斜めパスでダイアゴナル・ランを狙う相手の切れ味、それを水際で食い止め、ポゼッションに持ち込もうとする「東京らしさ」での、両者緊迫した熱戦となりました
ただ、両サイドバックが動きを見せる局面が少なかったのは残念に思いました
特に長友はポジショニングがあまりに守備的過ぎ、肩翼を失ったようになってしまったのが痛かったかな、と・・・
攻撃が中央に指向してしまい過ぎたのも、サイドバックが出ていけなかったことが原因であろうと思われました
ならば後半早目から鈴木達也を投入し、サイドを突かせたかったものの、この願いはあえなく散りました
あとは中央に寄ってはシュートをぶつけるばかり
石川がボールを持ったときだけチャンスになる(石井さん談)状況で、なんだか寂しかったです
とはいえ負けなかったのも事実
守備陣は本当に頑張ったと思います
中3日で名古屋戦、その後またすぐ川崎戦と、ハードですが、ここできっちり結果を残して中断期間に向かってもらいたいものと思います
またしても長文、失礼しました
投稿: スネーク | 2009年7月28日 (火) 01:45
スネーク様
コメントありがとうございます。
スペクタクルではなかったですが、密度の高い試合だったとは思います。
SBについては、相手SHが常に張っていて、そこにシャドーやボランチが絡んで数的不利に陥ることが多く、攻め切れなかったのかな、と思います。
今日は勝つぞ!
投稿: fct fan | 2009年8月 1日 (土) 12:04